先日、たまたま似たような形の瓶のソースが3種類たまったので、チキンカツで食べ比べをしてみた。
本当はトンカツでやりたかったのだけど、そこはそれ、経済的な理由というやつで。(^^;
食べ比べたのはこの3本。
左からゲットソース 特級濃厚、かつ喜 とんかつソース、月星 ナチュラルフルーツソース
これをチキンカツにかけて食べた。
総菜で買ってきたチキンカツ
チキンカツは、総菜で買ってきてしばらく時間の経ったフニャフニャのやつを電子レンジで温めてからオーブントースターでコロモをカリカリに戻したもの。
ゲットソースは東京都調布市の月兎ソース株式会社が販売するソース。
月に兎とは、図柄がかわいいね。
ラベルは大切ですよ。
サイトの説明を見るとこの会社は主に食材や消耗品を飲食店に販売をしている会社で、製造をしているようには見えないのだけども、ひょっとしたら製造はどこかに委託しているのか、あるいは製造会社を分社しているのかもしれない。
試してみたところ、スパイスがやや独特。ラベルにある「創業時のレシピを忠実に再現」の程度はよくわからないけれど、香りは確かに今の流行りとはちょっと違う。面白い。関西にはない香りだし、関東のものでも私は出会ったことがない。
ただし味自体は今回試した中では一番オーソドックス。酸味もさほど強くなく、かといって辛味や甘味が出ているわけではない。いい言い方をすればバランスが取れてる。
かつ喜は関西を中心に展開するトンカツチェーンで、大阪ではかなり古くからあるラーメンチェーン喜らくと同じ、株式会社きらくが運営している。
かつ喜の店舗
・かつ喜(きらくのサイト内)
トンカツソースはレジ横で売られている。ラベルにメーカー名が書かれていないのが残念なところ。
「販売者」にはつじのフードサービスの名があるが、これも関連会社(きらくの社長は辻野さん)。
サイトには「トマト・りんごをベースとした爽やかな秘伝の本格自家製ソース」とあるし、系列のお好み焼き店では焼きそば用の麺を製麺機で打っているくらいだし、ソースの自社製造をしている可能性もある。……でも、だったら「販売者」ではなく「製造者」を書くか)
正直に言ってしまうと、今回試した中ではこれが一番期待していなかった。
そもそもメーカー名を出していないところにあまりいい印象を持ってなかったんだろうと思う。
店で出しているということは、家庭用よりコストは低いだろうし、と。
ところがこれが、意外なことに。
食べた瞬間に「フルーツ!」と思うくらい香りがある。印象としては柑橘系なのだけど原材料には柑橘系がない。「その他」の中にあるリンゴの香りか香料か。酸味と甘味がいいバランス。これは逆に「さすが店舗用」というべきか。抜群においしい。ご飯が進む。(^O^)
ただ、かつ喜はとんかつを出す時に、とんかつ屋にはよくある、ゴマとすり鉢を出してくれる。これをあたってソースを入れてゴマとソースを混ぜてから、そこにとんかつをつけて食べるというスタイル。
となると店ではこのソースをこのまま味わうことは滅多にないということになる。もちろんゴマをあたらなければいいのだけども、出てきたらやっちゃうじゃないの。(^^;;
そう考えると、家庭用のこのソースは、このソースの味をじっくり味わえる、いい選択肢ということになりそうだ(家でどのくらいのとんかつが用意できるかは別として)。
1895(明治28)年創業(だるまソースブランド)というから、もしこの年からソースの製造販売まで始めたのであれば、日本最古の部類に入るソースメーカーだ。
日本で最初の市販ウスターソースと言われるヤマサ醤油の新味醤油/ミカドソースが発売されたのが1885(明治18)年(1886年という資料もある)。
現存するブランドで言えば、私の知る限り日ノ出ソース(明治18)、ビクトンソース(明治26)、三ツ矢ソース(明治27)に次ぐ古さだ。翌年の1896(明治29)年にはイカリソースが創業している。
ウェブストアで2本セットで初回限定1000円(送料込み)というのがあった。
同サイトによると「足利近辺には人が集まる場所に鉄板をつんだ、リヤカーつきの屋台でチンチンと鐘を鳴らしながら来て、焼きそばを焼いてくれる焼きそば屋さんが数多くいました。それも包装紙は新聞紙。そして食べる割り箸はたいへん貴重な物なので、ところてんのように1本で食べていたそうです。チンチン焼きそばとして親しまれ、食欲をそそる、いい香りがする月星ソースが少しずつ知れ渡りました」といったことが書かれている。
焼きそばソースもいい感じかもしれない。だからこのセットはうれしいところだ。
中濃ソースは関東では一般的だそうだが、関西ではほとんど見られない。
逆に云えば、中濃ソースの本場は関東だ。(^O^) それも含めて、とんかつ(いやごめん、今回はチキンカツ)にはどういう感じになるのかな、と興味深く試してみた。
うん。悪くない。お好み焼きでの使用を想定していないとんかつソース(※)の場合、やっぱり酸味を前面に出すのが常道というところだろうか。とんかつ用途であれば全然問題ない。おいしい。栃木にはいもフライがあるし、このあたりは揚げ物用と割り切るべきなんだろうな。
ただ、味はともかく香りという面では名前と違ってさほどフルーツ感は感じなかった。
というわけで、この中ではかつ喜とんかつソースが一番気に入った。うまい。
※お好み焼きでの使用を想定していないとんかつソース
関東の人(いや、今では関西でも?)は「お好み焼きでの使用を想定していないとんかつソース」って当たり前じゃん、お好み焼きにはお好み焼きソースだよ、と思うかもしれない。
もともと濃厚ソースは「とんかつソース」の名前で発売された(現オリバーソース/1948[昭和23]年)。それがお好み焼きやたこ焼きに使われだしたという経緯があるので、関西では今でも「とんかつソース」をお好み焼きに使うのは珍しいことではない。今でも小さな地ソースメーカーでは「ウスターソース」と「とんかつソース」しか製造していないところも多く、お好み焼き屋はそこの「とんかつソース」を使用している。
初めてお好み焼き専用ソースを発売したのは佐々木商店(広島/現オタフクソース)。業務用の「オタフクソース」(1952(昭和27)年)が初めてで、5年後の1957(昭和32)年には「オタフクお好みソース」という名前で家庭用を発売している。関西では1968(昭和43)年のオリバーソースの「お好み焼きソース」が最初。
こんな感じで、関西・中国・四国(ごめん、まとめて「関西」と書く)ではとんかつソースはお好み焼きに使うことを前提とした味つけになっているのだが、関西以外ではおそらくそんな前提はないと思う。例えばカゴメ(名古屋)の醸熟ソースはウスター/とんかつのいずれも関西のたいていのスーパーに並んでいるが、このとんかつソースでお好み焼きを作る関西の家庭はほとんどないと思う。
関東でも、おそらくお好み焼きには初めから専用の「お好み焼きソース」を使い、とんかつにはとんかつソース、いやおそらく中濃ソースを使うだろう。中濃ソースの味つけは揚げ物には向いていてもお好み焼きには向いていないので、できればお好み焼きソース……関東でもオタフクソースくらいは手に入るだろうからそちらを使ってほしい。
これはあくまでもチキンカツを食べた今回はという意味で、別のものにかければまた評価は違ってくるはず。
ソースは何かにつけて食べる調味料なので、単独でのうまさはあまり意味がない。そして料理によってそのうまさは変わる。
最終更新:2017/03/21